ちいさな心とおおきな世界

悩める若者の雑記と旅行記。チェコ共和国プラハに留学中。

チェコの偉大な写真家ヨセフ・コウデルカについて。写真展に行ってきたよ

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ヨセフ・コウデルカの展示に行ってきた。開始時からずっと行きたい行きたい言っておきながら、3ヶ月ほど経ってしまってからようやく行った。
 

ヨセフ・コウデルカって誰?

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優しそうなおじいちゃんです
1938年生まれ、チェコスロヴァキア出身の写真家の中で僕が1番好きな人のひとり。元々は写真の専門であったわけではなく、航空技師だったが、やがて仕事を辞め写真で生きていくようになった。
おそらく一番有名なのがinvasionというシリーズで、1968年のプラハの春の報道写真。当時共産圏であったチェコの、市民を中心とした民主化運動に対してソ連が軍事介入することによって無理矢理運動を押し潰した事件である。その時プラハにいたコウデルカが撮影したソ連の軍事介入の様子と武器を持たぬ市民らが、それに対抗する様子を収めたシリーズは半共産主義の証としてチェコ以外でも広く使われてきた。
 

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おそらく一番有名な写真
 
他にもコウデルカは初期の”Experiments”、知人に頼まれて始まった”Theatre”という舞台を撮ったシリーズ、代表作ともいうべき”Gipseis”というジプシーを撮り続けたシリーズ、”Exiles”という流浪の人々や旅先での物事を撮り続けたシリーズ、そして近年の”Chaos"などパノラマカメラで撮り続けているシリーズがある。
 
ちなみにプラハの春の後イギリスに亡命した際にマグナム・フォトに加盟している。
 
 

写真展Josef Koudelka / Returning

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写真展そのものについて。現在プラハで開催されている。
コウデルカの生誕80歳の記念として、彼の生涯を通しての作品を展示している。その数400点を超える。もちろん、"Invasion" の作品も含んでいる。

場所:Museum of Decorative Arts

期間:2018/3/22-9/23

 

 

コウデルカの写真について

彼の写真はシリーズやその時期によって変化が大きい。例えばかつてはずっと『人』を撮り続けていたのに、現在は人ではなく自然や環境、構造物などをメインに撮影している。

その中でも彼の写真に共通してみられる特徴が

・白黒フィルムのみ

・異常に強いコントラスト

・ストリートフォト/スナップがメイン

・写真の中に意味合いが強い

 

彼の作品群の中で異端なのが、最も有名な"Invasion"のシリーズ。つまりプラハの春の際の写真である。そもそも彼はフォトジャーナリストではない。従って報道写真は撮らないし、記事も書かない、趣味としての写真が職業に転じた人間だ。

 

プラハの春とコウデルカ

では彼はなぜプラハの春の写真で有名になり、今でも代表作となっているのか。それは彼の祖国であったからに違いない。当時彼はジプシーの撮影に出ていたが、プラハの民主化運動とそれに対してのソ連の軍事介入の噂を聞きつけてプラハに帰ってきたのだ。そして軍事介入がついに始まった。そして彼が言うには決して「報道写真を残そうと思って撮った」訳ではないそうだ。ただその惨状に対して自分ができることは何かを考えていたら気づけば写真を撮り続けていた。危険な行為であると言う自覚はなかったらしい。そしてその写真群は秘密裏に国外へ持ち出されて、彼や家族の身に危険が及ばぬように匿名の写真家からとして世界へ公表されていった。それが唯一にして最大の彼の報道写真だった。

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"I think that these photos of mine have mainly a documentary value. But maybe in the best of them they and whos Crech What's more than just that. What is important in the photographs is not who's a important is that one person has a gun and the other hasn't. And the one who hasn't is, in fact the stronger.even though that's not immediately apparent"

Josef Koudelka, 1990

 重要なのは銃を持った人々よりも、持ってなかった人たちの方が強かったということなんだ。まさにプラハの春を象徴するような言葉。この時の彼の写真をじっくりみているだけで当時の様子などか結構わかってくるので興味ある方はぜひみてほしい。

 

彼は本物の流浪の旅人だった

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プラハの春後に亡命した彼は、次のシリーズの撮影に取掛った。"Exiles"(亡命者、流刑者)だ。この際に彼は長く長く旅をする。「僕はフラットを借りるお金で旅をすることができることを知っているんだ。そして僕はみんなが『帰る場所』と呼ぶものを必要としていない」

本当に彼は旅を続けます。ひたすら各地の人々の様子を撮影して、撮影するものが全くなくなったと思ったら次の場所へ移動する。こういったことを続ける。本当に流浪の旅とは彼のようなことを言うのだろう。その成果か、各地で本当に素晴らしい作品を撮影している。ただ写真に没頭すればこんな写真が撮れるのだろうかと思わされるようなものばかり。

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彼のこのシリーズが旅するストリートフォトグラファーの究極系だと思わされてならない。いつか少しでも彼のような美しく面白い写真を旅先で撮ってみたいものである。

 

近年のパノラマ写真について

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近年のシリーズはパノラマで撮影した自然や風景の写真で、これまでのシリーズとは一風変わったものになっている。「破壊された自然や建築物」のようなテーマで撮っていて、自然環境的な視点で評価されているらしい。正直に言うとこれまでの人物の写真や旅の写真の方がずっと好きだった。でも実際にパノラマの迫力で展示を見てみるとこれがなんとも面白い。被写体はもちろんなのだが、パノラマで撮っているだけでこうも違って見えるのか。

僕は基本的に風景写真を撮ることにあまり興味を持てないたちなのだが、こうやってやり方を少し変えてみれば結構違うんじゃないかと思わされた。ちょっとそのうち挑戦してみたい。

 

まとめ

まぁ色々書いたけど、要するに大好きな写真家の展示に行ってきたよって話。本当に良かった。チェコ出身で一番好きな写真家かもしれない。(ヨセフ・スデックも捨てがたいけど好み的な意味では)

 

写真が興味ない人でも、チェコやプラハの春関係の歴史なんかに興味があるひとは"Invasion"のシリーズだけでも見てほしい。感じるものがきっとあるはず。